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2008年2月14日

ゾディアック(2006)

- 恐怖の盛り上げ方が巧い  -

この話は実話だそうで、しかもダーティー・ハリーの犯人のモデルになっていただなんて、全然知りませんでした。

本当の犯人が誰なのか、結局はっきりしたことは解りませんでしたが、終わりのコメントで述べられていたように、非常に怪しい人物がいたようです。

犯人像がいろいろ説明されていましたが、頭が良いのか、単に用心深いのか、もしくは意外にこちらが考えているより単純な、いきあたりばったりの人物だったのか、正解が解らないだけに映画の視点も独特のものでした。

今までの刑事ものに慣れた人は、「?。だから結局犯人は誰なんだよ!はっきりせいよ!」と思うかも知れません。でも、私はこんなストーリーも実際の捜査みたいで、臨場感があって面白いと思います。

懐かしいアンソニー・エドワースが刑事役で出演していました。ERのチーフレジデント役は当たりでした。あのシリーズは完全に彼が中心だったと思います。小児科医のジョージ・クルーニーが主演だと作品全体としてのバランスが損なわれますが、臨床現場にいそうな顔をしたエドワースが中心だったことで臨場感が出ました。最近のシリーズは、最初は研修医だったカーター君がベテランになっているので違和感があります。

ジェイク・ギレンホールは、オカマ顔なんでしょうか?日本人の私にはよく解りませんが、この作品の中でオタクっぽいようなことを言われています。ブロークバックマウンテンのイメージがあるからかもしれませんが・・。

デヴィッド・フィンチャー監督は、「セブン」や「ゲーム」など怖い作品ばっかり撮ってる人で、その盛り上げ方が実に巧いと感心します。なんてことない事件でも、当事者になってブルブル震えないといけないような気になります。

この作品でも、主人公の漫画家が容疑者のことを尋ねるうちに地下室に入りこんで、目の前の男が犯人かもしれないと悟った時の恐怖を巧妙に盛り上げていました。他の監督なら、あっさり終わりそうなシーンなんですけど。

他の作品を思い出しても、怖がらせ専門みたいです。性格異常者かと思いましたら、メイキングビデオを見た限りではマトモのようで、ただし完璧主義者の凝り性ではあるような話し振りでした。

この作品は期待しないで観たせいか、驚きました。傑作と言ってよい出来栄えです。アクションは大したことない、昨今の現実の事件ほうが怖いくらいの題材なんですが、描き方が実に巧く映像も凝ってるので、感心しながら観ないといけないような作品でした。おそらく若い映画人達は、この映画に強く影響された怖い映画をガンガン作りたがるでしょう。あんまり作らないで欲しいものです。私は怖がりだっちゅうに。

犯行動機が解らない犯罪が増えていますから、犯罪の筋書きを構築するのは昔より難しくなっていることでしょう。あまりに異常な犯人の場合、特に犯行声明などで揺さぶりをかけ、数十年に渡って犯行を繰り返したりされたら、刑事達の人生にも大きな影響があるでしょう。

カーアクションなどのドギツいアクションがない題材ですので、視点を警察や新聞社に置いたことは正解でした。事件に振り回された人達のドラマが、とてもうまく表現されていて、製作者の意図は成功していたと考えます。

場面のつなぎ方も見事でした。時間が経って行くことを表現するために、ビルの建設現場の写真を長期間撮影して早送りするなんてオタクでないとやれません。CGだったかもしれませんが、実写で撮影していたように見えました。日本ならカメラがもったいなくて思いついても止めるでしょう。

冒頭で手紙が移動するにつれて、社内の中枢部にカメラが移動する場面がありましたが、あれはよく使われる手法なので、ちょっといただけなかったかも知れません。主人公に内容が届くまで時間差があったはずなので、タイミング的にもおかしかったと思います。おそらく殺人予告をされる記者に対しての手紙が、投函されてから届くまででやるとリズムが出て良かっただろうに・・。

殺人の舞台となった湖の風景が昔と変ったからといって、わざわざ草を植え、木を切ってヘリコプターで持ってきて埋めてたようですが、本当にあきれます。費用がいくらかかるんじゃいと思いました。資金担当者が怒らない自由な環境がないと、とてもやれません。この作品は、テーマから考えて世界中で大ヒットすることは望みにくいと思うのですが、予算をケチらなかったことは、結果的に作品の質を上げていたようです。どの場面も臨場感がありました。

新聞社の内部の広い部屋は、懐かしい活気を感じさせました。「アパートの鍵貸します。」の事務所で使われたような広大な部屋で、忙しそうに職員が動き回っている光景は、観終わった後考えてみれば、確かに臨場感のために必要な場面でした。予算をケチって狭い部屋で撮影したら、テレビの安物刑事ドラマみたいになっていたかも知れません。

とにかく、そのような撮影技術、表現の手法、こだわりなどに、昔の作品からよく勉強した経験の積み重ね、伝統芸のようなものを感じました。

この作品は、子供には絶対に見せないほうがいいと思います。題材からして異常者の話ですから、変な影響がないとも限りません。恋人といっしょに観て良いのかもよく解りませんが、映画が非常に好きな方となら、手法などを批評する題材になっていいかも知れません。恋には良い影響はないような気がします。雰囲気が良くなるかどうかも解りません。

でも、レベルの高い傑作だと思います。

 

 

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