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2007年12月26日

プラトーン(1986)

- 個性光る登場人物達  -

スパイダーマンを観ていて、急に思い出して観てみた。

この作品は高く評価されアカデミー賞を取ったが、今は知らない人のほうが多いかも知れない。よくできてはいたが、いわゆる娯楽作品ではなく、あざやかな勝利でスカッとしたい人には向かない。家族や恋人といっしょに観るタイプの映画でもないと思う。

役者では、ウイレム・デフォーが最も印象に残った。彼は、確か「ストリート・オブ・ファイヤー」に悪役で登場していたが、その当時は迫力不足の印象しかなかった。でも、この映画でアップでの表情を見ると本当に魅力的。最近も悪役の代表選手のような存在だが、単純な悪役でないように工夫している様子。

トム・ベレンジャー演じるバーンズ大佐も光っていた。最も大事な役どころだったと思う。この映画ではタフネスの印象だったが、「メジャー・リーグ」では少しきゃしゃなベテラン選手の印象しか持てません。意外にマッチョマンではなかった。演技の力か、演出の力か?

この二人にはさまれるチャーリー・シーンの演技にも好感を持てた。彼はギャグで「ホットショット」にも出演しているが、この映画のような役柄が最高に合う。

バーンズ大佐は、ある意味で戦場における勇者の代表選手を演じていたと思う。部隊の中でも巧みに君臨し、生き残り、戦争犯罪を起こしても有罪にはならないように、ちゃんと手を打つ。このような人間は、会社組織の中にも必ずいる。

このような人間は優秀な兵士~会社員ではあるので、多くの場合は出世していくが、長期的に見ると組織の機能を損ない、映画の中と同じように仲間を平気で処分するため、いっしょに活動する者達は悲惨な目に合う可能性が高くなる。

そのへんの仕組みが、自然な形でストーリーに反映されていた。作者の視点が優れていたからできたことだろう。麻薬などにおぼれる兵隊達の気持ちも、少しは解るような気がした。戦場のような極限状態では、バーンズみたいな人間が適応して君臨していく。

かっての日本軍も似たようなものだったかも知れない。君臨すると周りを不幸にするタイプは、特に日本のような精神風土には多いかも知れない。集団になった時に、ルールに則った議論の仕方を続けるトレーニングができていないからだと思う。大の大人が、それこそ我が国のエリートですら、仲間内の人間関係で組織全体の方針を誤ることを繰り返している。

敵を待ち伏せしているうちに当番が居眠りし、ゆっくり敵がせまるシーンは臨場感のある場面だった。戦闘シーンも、華々しい爆撃で敵を片付けるのではなく、白兵戦で乱闘する状況が多かったのだが、実際に従軍した監督ならではの演出だった。

ラスト近くの戦闘は、ディエンビエンフーの陥落がモデルになっていると思う。エリートの司令官の指揮の下、現場の状況を把握できないまま戦闘に入り、ゲリラと米軍が入り乱れ、とにかくそこらじゅうに爆弾をばらまけ!と命令するくらいの混乱が解りやすかった。

ゲリラ戦は、まさにそのような混乱を目標にしている。まともに米軍と戦ったら爆弾の餌になるから、まず戦闘員と非戦闘員が区別できないようにすること、時には戦闘の常識を破る人海戦術を取ること、自爆攻撃など人道無視の方法で戦い、混乱の中に引きずり込むことを目指さざるをえない。

今のイラクも似たような混乱状態にあるのではないか。

小隊の中での人間模様、せまる敵の怖さ、失敗の仕方、兵卒の感情などを実にうまく表現できていたと思う。残念ながら、ベトコン側の視点はなかったが、これは仕方ないでしょう。

 

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