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2007年10月21日

ダンス・ウィズ・ウルブズ

- 力作 -

これは大作でした。力が入っていることを感じさせました。当時のケビン・コスナーはスターの中でも際立つほどの大スターでしたが、その彼が製作した意気込みが我々にも伝わりました。お尻を見せて笑いを取ったり、サービス精神も感じました。

優れた作品だと思いますが、今の日本人の若い人に勧められるかと言うと、あんまり勧められません。どうとらえて良いのか説明に困るところがあります。残酷なシーンも多いので、子供には勧められないと考えます。恋人といっしょに観るのもどうか解りません。私自身がこの作品を完全に理解できていないからだと思います。

本当は、インディアンに対する深い理解と同情を非常に美しく表現できているのかも知れません。印象的なシーンが多いのは、たぶん傑作だからでしょう。ただし、本職の監督のような職人芸の映像ではなかったような気がします。

インディアンの戦士が、主人公と別れるときに顔を見せず、どこに行ったのかと見ていると、「俺は戦士○○だ! 俺はお前を忘れない!」と声たからかに叫ぶシーンは感動的でした。彼らしい友情の表現だと思いました。

主人公が自殺目的で敵の前をかけるシーン、バッファローの狩のシーン、オオカミが現われては消えるシーン、別なインディアン部族との戦闘シーンなどなど、たくさんの名場面が作品のスケールの大きさを感じさせました。南北戦争時代は、アメリカ人にとっては小説の題材として最適なのでしょう。「風と共に去りぬ」から最近の「コールドマウンテン」に至るまで、叙事詩的な大作は決まって南北戦争を舞台にしています。

追い詰められていくインディアン側の視点は、アメリカ人には必ずしも一般的ではないものなのかも知れません。なかなかヒットする作品は少ないようで、この作品は例外です。その点に、この作品の価値があるのかも知れませんが、視点は我々から見れば常識的なものなので、そのへんで感動しきれないのかも知れません。

古来のインディアンが、どのような人達であったのかは解りませんが、部族を作って生活していくからには、きっと規律があって、それなりに人間的な活動をしていたに違いありません。戦いばかり好きな野蛮人だったはずはありません。ちなみに妻は毎日私にバトルを仕掛けてきますから、インディアン達よりずっと好戦的です。

征服された新大陸の住民は生き方が欧米人と違っていたはずです。

アメリカ政府はインディアンの土地が欲しかったので、妙な契約を持ち出して型にはめてやろうと考えたのでしょう。保険会社が意図的に小さな文字の書類を提示するのと似てます。契約に基づき異民族と相対し、違反したと言っては戦闘をしていく論理は今も健在です。

インディアンにしてみれば、契約は自分達の習慣にそぐわなかったはずですから、いいようにだまされ、勝手に解釈されては追い詰められる結果になっていったはずです。考えてみれば、自分が作った法律で勝訴して正当化していたんですから無茶な話です。とにかく相手は法律の専門家で、だまそうと考えて契約に臨む保険屋みたいなものですから。

まともに裁判すれば、きっと不当な契約の実態が暴かれ、陪審員も全員一致でインディアンの言い分を認め、アメリカ政府の敗訴は確実でなければなりません。保険料不払いの時と同じく閣僚が陳謝して、法律上は北米大陸はインディアンの聖地に戻ることができるかも知れません。

おそらく、本来が違法であるアメリカという存在は、矛盾に満ちた歴史上の奇跡だと思います。物量にまかせたライフスタイル、妙に宗教的な精神構造、平気で銃を認める伝統、極端な合理精神など、他の伝統国では成立しえない特徴を持っています。その矛盾が魅力でもありますが。

今となってはアメリカ政府がヨーロッパに帰るわけにもいきませんので、せめてインディアンがアル中になるしかないような状況には追い込まないで欲しいものです。

ケビン・コスナーは最近出番が減ってきました。特別マッチョでもないし、ほんわり良心を感じさせるイメージでは、そうそう役が続かないので仕方ないかも知れません。でも、ゲーリー・クーパーなども老人になってから傑作に主演していますから、イメージを壊さないでチャンスを待ってほしいと思います。

 

 

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