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2007年10月12日

県庁の星(2006)

- 規定の改革を  -

よくできた話でした。家族や恋人や友人など、誰と観てもいい話だと思います。

最近は、役所の意識改革を公約に掲げる人が首長に選ばれる傾向があります。確かに役所の仕事の効率の悪さや職員の不親切ぶりは、目に余るものがあると思います。首長が変れば、少しくらいは職員の意識も変るのではと期待したい気にもなります。この作品は、そのへんの我々の感覚を巧く表現できていたと思います。

ヒーロー映画だったら、主人公は選挙に出るか、もしくは議員の汚職を暴くような活躍をすることになりますが、この話はより現実的な小さな活躍に限定していたようです。圧倒的なパワーでグイグイ仲間を引っ張って改革するストーリーではありませんでした。それが興行的に良かったか分りませんが、作品の質を上げていたはずです。

織田祐二は、いつのまにか日本を代表する俳優になってしまった感がありますが、昔の二枚目のように皆がうっとりするような甘いマスクではなく、どちらかといえばアニキ風で親しみやすいところが現代的なんでしょう。テレビのスポーツ番組の解説にも出ていますが、私としてはイメージの上から良くないような気がします。解説は、やはりハイテンションの専門家に任せたほうがいいのではないでしょうか?

柴崎コウは大きな目が印象的な、女優になるために生まれてきたような方です。最初は化粧品のコマーシャルにお嬢様風スタイルで登場しましたが、最近は下町の娘やシングルマザー風の、目つきが厳しい役柄が多いようです。目が大きいので、厳しい目つきをした時の迫力があって、非常にうまく演じていると思います。

端役の人達も、全体に少しオーバーではありましたが、以前の日本映画に見られるような「演劇風の所作」が少なく、自然に近い演技で好感を持ちました。

とにかく公務員の働きっぷりは、気になります。

私は、いくつかの公立病院に勤務しましたが、職員はどこでも皆よく働いていたと思います。忙しい時期の看護婦さんなどは、それはもう大変な仕事をしていて、勤務の終わりには抱きしめてあげたいくらい(特に美人の看護婦を)でした。

しかし、いつも倒れそうなほど働いていたわけではありません。何か新しい作業をする必要が生じた場合などは、「これ以上勤務環境を悪くしないで!」と、激しく反対をするのが常でした。例えば、急患を受け入れるか断るかの判断に関して、態度で反対の意志を示すといった具合でした。それが日常化して、あまり忙しくない時にも同じ態度を取るようになっていたようです。

医者は数年毎に転勤していくのが普通ですから、いわば派遣社員のようなものです。例えるなら、車を修理する現場に車のデザイナーが来てあれこれ指図されても、修理工ならウルサイなあくらいにしか思えないのと似た感覚でしょうか。利害が一致してないヤツが勝手に改革しても、やがて無責任にも去っていくなら、義務がない限り言うことを聞く必要はないと考えているように感じました。

制度に欠陥があるのだと思います。世の中は、基本的には信賞必罰で動くべきです。病院は営利企業ではありませんから評価が難しいのですが、成績が良ければ何かの利益や栄誉が共有される仕組みが必要だと思います。役所の場合は、それが曖昧になっていることが構造上の欠陥でしょう。

給与の体系、人事の体系、何を公表するか、義務はどこまであるのか、それらを規定する文書の思想自体が古くて、改革の障害になっています。病院が改革しようにも、公務員法や人事院勧告が邪魔です。法律を練り直すべきです。それが行政改革の本丸です。日本の場合は、アメリカなどに比べて役所の果たす役割が大きいので、役所が変ると国が変ります。

役所は規定で動くもので、意識だけでは改革できません。この映画は意識改革をテーマにしていましたが、実効を生むためには意識に加えて法的規則の改革が必要だと思います。

 

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