映画評

  • 当劇場は劇場主のための映画館です。訪問者を期待しておりません。内容の客観性、正確性は保障できません。でも、真摯な批評を目指します。

劇場主


Conflict of Interest

  • 特にありません。

おことわり

  • 当劇場は誹謗中傷を目的としておりません。もし権利を侵害されたと感じられた方は、申し訳ありませんが管理会社や公的機関に御相談ください。

« オースティン・パワーズ・ゴールドメンバー(2002) | トップページ | バリー・リンドン(1975) »

2007年10月 8日

ナイロビの蜂(2005)

- バランスが良い作品 -

ナイロビの蜂は、いろんな要素が詰まった秀作だと思います。

冒頭の空港のシーンなどでは、外部の露光を上げてホワイトアウトのようにする部分が何度かありましたが、印象的でした。ちょっと実験的で幼稚と見えなくもないかもしれませんが、なんとなく謎めいた不可解な雰囲気に合っていました。

残念ながら、子供には向かない作品でした。むごい場面は極力ぼかして撮影されていましたが、皆無ではなかったようです。恋人と観るのは、お勧めしていいように思います。痛快な娯楽作品ではないので、盛り上がる効果は期待できませんが、主人公達の愛情の深まりが伝わってくる作品で、深く小説を読むようなタイプの人は、観た後の印象が悪くないと思います。

愛の物語としても、美しい作品でした。主人公は、自分の思慮が足りなかったことを自覚します。社会悪はたくさんありますので、たいていの場合は無視するほうが利口ですが、告発せずにはおれない人がいます。「あんまりやり過ぎないほうがいいよ。」と、ついつい邪魔をしてしまいがちですが、それが思いやりから出た言葉であっても、結果的に思いやっていなかったことになる場合もあります。この作品のストーリーは、その極端な例でした。

主人公は、妻が死ぬまでは実に頼りなく、勘の鈍い、庭いじりしか興味がないような、ほとんどバカみたいな男として描かれていました。ヒーローめいたところはなく、最後は危険を顧みずに奥地に潜入し、重要な書類を手に入れることに成功しますが、したたかさやタフネスさとは無縁のキャラクターを演じていました。ダメさ加減が名演だったと思います。しかし、興行面を考えるなら、後半はもっとタフに変身するべきだったかもしれません。なぐられても怪我しても、包帯を巻きながら根性で追及してほしかったと思います。

謎解きの要素もありました。妻は不倫をしていたのか?誰かに殺されたのか?妻が探ろうとしていたのは何だったのか?どのような仕組みで悪事が企てられているのか?この謎解きの仕方は、ちょっと簡単すぎたような気もします。主人公自身が、会社などに潜入して、スパイものか冒険活劇のように悪事を暴き出したら、爽快感があったはずです。現実味は失せますが。

たびたびアフリカの子供達が画面に登場していましたが、自然な笑顔を見せていました。この映画は、ドキュメンタリーではないのですが、ある意味では現実の状態を表現していますから、かわいい子供達の映像は効果的でした。また、湖の光景も独特で印象に残りました。湖面を鳥が飛ぶシーンが2回使われていましたが、同じシーンを2回繰り返す意味は分りませんでした。

主人公が頼りなかった関係で、ヒロインが際立ちました。勇敢で、人間愛に満ちたキャラクターを、うまく演じていました。実際の妊娠中に撮影したのかと思いましたが、記録を見る限りは、偽装妊娠だったようです。「ハムナプトラ」では、オチャラケのキャラクターでしたので、あのような作品だけで終わる女優かと思っていましたが、意外や意外、大変な名演でした。アカデミー賞を取ったこともうなずけます。

悪役達のキャラクターが自然だったと思います。会社社長がゴルフ場で見せる表情や会話、情報機関の上役、政府の高官、同僚なども、あまりオーバーすぎない自然な演出で、保身に汲々とするだけの人物がほとんどで、巨悪のボスの単独犯行でないところが描けていたと思います。

総じて、バランスが良い作品だと思います。主人公は頼りなかったのですが、かわりにヒロインが魅力的で、謎解きとスリル、夫婦愛、モラルと人類愛などの格調の高い要素がからんで、秀作だと思いました。逆に要素が多すぎて、中途半端な作品だと感じる人も多いかも知れません。

薬の開発に関しては、動く金が巨額なので、いろんな事件が起こっています。私が知っているだけでも、開発途中で治験中止になった薬品はたくさんあります。おそらく、その場合は製薬会社の担当者の出世にひびいているはずです。億単位の金を使って、ポシャッて何の利益もないとなると、誰かが責任を取らないといけないでしょう。当然、多少の捏造をしてでも、何とか開発を続けたいという心理が働くはずです。

大学時代の先生が、治験の結果に色を付けて職を追われてしまいました。他にも、ばれていないけれど灰色の治験はたくさんあったと思います。はっきり数字で結果が出るならともかく、印象として有効か無効かを問われると、判断が難しい場合は多々あります。なんでこの薬が認められたのか怪しい製品は今でも結構ありますが、使っている先生に聞くと、「自分の印象では使いやすい薬ですから使っています。」と答えます。使う根拠を明示できるかどうかが大事でしょう。

そもそも治験というのは人体実験ですから、えてして経済的な仕組みを作って参加を取引する傾向はあります。特にアフリカが実験場になる危険性は常にあります。

10月現在まだ係争中だと思いますが、ファイザー製薬はナイジェリアの髄膜炎流行時に、Trovan という薬の開発治験をやったそうですが、告知が充分でなかった可能性があるとして訴訟になったそうです。映画が現実とだぶって見えます。

« オースティン・パワーズ・ゴールドメンバー(2002) | トップページ | バリー・リンドン(1975) »

無料ブログはココログ