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2007年8月15日

硫黄島からの手紙(2006)

- 強い組織のあり方を考えました  -

この映画は日系人の方が脚本を書いたそうですが、よくこんなのを作ろうと考えたものだと感心します。「父親達の星条旗」を作るのと同じセット、同じ資材で2作品を作れますから、効率は良いし、視点が2つになってお互いの作品の価値を高める効果もあると思いますので、2作品を作ったのは良いアイディアでした。

演出は客観的に描こうと努力しているように感じました。もちろん主人公の感情は描いていましたが、変に英雄視しない視点を感じました。残念ながら、国内の製作者では客観性を保って映画を作れる人はいないと思います。

主演は「嵐」の二宮君演じる2等兵と、硫黄島戦の指揮をとった渡辺謙演じる栗林中将でした。二宮君は、上官にたたかれながら塹壕掘りをやっていますが、妻と子供を残して確実に死ぬとしか思えない戦場にいる状況で、ほとんど囚人と言ってよい感じです。いっぽうの栗林は米軍の攻撃を撃退できる可能性がないことから、ゲリラ戦に持ち込むことを決意します。しかし、軍の中には勇ましい戦闘を期待するものが多く、独断で突撃する部隊があって指揮が統一されません。 

米軍に投降する者も出てきます。二宮君もそのつもりですが、米兵の中にも人道的でないヤツがいます。二宮君が脱走を勧めた男は代わりに殺されてしまい、二宮君は後悔します。やがて栗林の奮闘もついに力尽きてしまいますが、二宮君は栗林に助けられて総攻撃から逃れます。彼のその後は、どうなったのでしょうか。

映像は本当の硫黄島かどうか知りませんが、あのような島では波打ち際に陣取っても、艦砲射撃でやられるだけでしょう。船も航空機もなければ、撃退は諦めるしかありません。撤退が最善ですが、戦うならベトナム式のゲリラ戦しかないのは明らかです。塹壕を掘るより、せっせと穴を掘り蒸留水を貯えるべきでした。地雷を撒くのも定石だったはずですが。

硫黄島に赴任したということは、ほとんど死ぬに等しい状況だと思いますが、当時の一般兵卒はどんな気持ちだったのでしょうか。「一日でも本土の空爆を遅らせる目的で頑張れ。」と言われても、「空爆が遅れても、一日長くなれば同じだ」という考え方もできます。「自分達は完全な犬死なのか。」と考えながら死ぬのは耐え切れないことです。

実際に二宮君のような考え方をする人間は、殺されないために決して人前で自分の考えをもらさないはずです。子供の頃、わたしが戦友会で聞いた話では、戦場では映画のようないさかいは実際に頻回に起きていたそうです。また、敵と戦うより陸軍と海軍が勢力争いをする方が激しくて、外国に対して効果的な対策など取りようがなかったという話も聞きました。

当時の出征先の選定には、かなり恣意的な判断が加わっていたようです。軍の中枢部からにらまれていたために激戦地に送り込むなどのケースも結構あったようです。それでは優秀な人材を失う結果になります。栗林やバロン西もねたみを買っていたために派遣されたのかも知れません。組織のあり方で、そもそも負けが決まっていたように思います。判断を公正にさせるような軍規が必要でした。

優れた軍規がないと、先見性のある人間ほど先に死んで、残るのは能力的に問題のある兵隊になってしまいます。戦後はクズしか残らなかったとグチっているおばあちゃんがいましたが、要領が良く勇ましいことを言うだけの人間が生き残ったということでしょう。今でもいろんな組織が、この傾向から抜け出せません。恣意的な判断が通用しない組織が求められます。硫黄島で亡くなった方達は、さぞ無念だったと思います。

さて、映画は心理劇が中心になったためか、いまひとつ盛り上がりにかけたような気もします。戦闘シーンも、最近の韓国映画ほどではないようです。でも、激しく華々しいだけが戦争映画ではありません。極限状態での人の生き様を現した佳作だと思います。

’嵐’の二宮君は、アイドルとは一線を画した演技でしたが、もっと大人っぽい俳優の方が良かったような気がしました。手紙がハラハラと落ちてしまうシーンがありましたが、演出のためとは言え、もっと大切に扱わんかいと言いたくなりました。ちなみに、硫黄島の穴は地熱で高温多湿の環境ですから、箱に入ってない限りボロボロのはずですが?

なお、硫黄島は、平成19年6月18日に「いおうとう」に呼称が統一されたそうです。

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