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2007年7月 4日

ギルバート グレイプ

Photo_43 - 新しい街に行こうか! -

この映画をご存じでしょうか? 今やとぼけたメイクで大スターのジョニー デップが寂しげな顔をして主演していますし、かのレオ様が障害者の青年を演じている、今思えば作品の出来としては二人の代表作と言えるものです。

いかにも小説的なシチューエーションの、美しい話でした。あちらの映画には、この作品と同じような雰囲気のものがたくさんありますが、この「ギルバート グレイプ」は、その中でも特に観た後の印象が良い作品でした。家族で見れる作品だと思います。恋人と観ると、結構良い雰囲気になれるような気がしますが、時間がゆっくりある時でないと、話がワクワクしなくてつまらないと感じる人もいるかもしれません。

アメリカのどこかの田舎町に住むジョニー デップは、障害者の弟であるディカプリオ、超肥満体の母親、二人の姉妹と暮らしていますが、過去に父親が自宅で首を吊って自殺していて、その心の傷のためか、家族の皆が協力し合い、慰めあっているにもかかわらず希望を持てない生活を続けていました。

トレーラーハウスで生活する母娘が、車の故障のためにしばらくこの町に滞在してジョニー兄弟と関わることで、家族全体に波のように影響が起きます。ジョニー本人は、やはり自分の置かれた状況を見つめなおす機会になったようです。母親も、心の傷のために動けないでいたようですが、ディカプリオの拘束されることに対しては毅然として人前にも出て行きます。

ラストはジョニー兄弟に新しい生活への期待を感じさせるシーンでした。でも、そこに至るまでは基本的には不幸な物語が展開されます。

基調となるのが不幸な過去、抜け出せない複雑な問題、お互いに助け合い、時には傷つけ合う家族、個性ある友人、そして美しい風景でした。風景も人間に影響を及ぼすと思います。

私は山の中で育ちましたが、山の中の田舎村では自殺者が非常に多く、一集落に2~3件はいます。同級生の仲がよかった女の子も焼身自殺してしまいました。産業がないことから金銭的に苦しいことと、娯楽も少ない、皆知っている人達ばかりで羽目を外せない、やたら雨の日が多くて家でじっとしているしかない、若い人は職を求めて都会にでてしまう、残った人は息が詰まるような閉塞感があり、将来に希望を持てないというのが理由だと考えます。

日本の山の中にこの家族がいたとしたら、まずトレーラーハウスは来ませんし、近所の人の目が気になってなかなか旅行者の女の子と話もできませんし、外で遊んでいたらすぐ雨が降って、皆で1日中テレビを見るしかないかもしれません。日本の田舎は物語にならんなあと思います。

アメリカだと、地平線の向こうから車の集団が移動して来ますし、からっと晴れた日では野原での少女との会話も楽しくなりますし(そういえば雨のシーンはありましたっけ?)、地続きで広大な原野が拡がっているわけですから、「この町でだめなら他の町でやりなおそうかい」という発想も自然にできそうです。きっと、人間の考え方には風景が強く影響すると思います。

また、例えば経済的に豊かなら、ジョニー家族の物語も随分変ってくるでしょう。父親がいなくても、とりあえず介護の人を頼んで母や弟の面倒を見てもらって、自分は自分の生活を営むことも可能です。豊かさは全てではありませんが、かなりの問題を対処可能にします。

仕事柄、障害者の家族と接する機会が多いのですが、家族を愛する気持ちと、義務感、今後への不安、経済的な問題、時間の制約などなど、簡単に抜け出せない状況でも耐えている人に本当に感心します。私自身がいかに恵まれていたか、いかに思いやりに欠けた言動をとって来たかを恥じます。ついつい勉強しない子供たちを口汚く怒ったりしてしまいますが、怒り方を考えないといけません。

気がつけば高いところに登りたがるディカプリオの演技は、非常に迫力がありました。日本の俳優にもっとうまくやれる人がいると思いますが、彼の若さとかわいらしい顔付がよりいっそう可哀想な印象を与えてくれますので、この映画の物悲しさが引き立ちました。兄に殴られて鼻血を拭く時の眼が一瞬無表情になるのは、障害者独特の表情でした。単純に泣くだけではない、我々と違うレベルで何かを感じ、考えている時の反応をよく現していたと思います。

ジョニー デップって、眼の下にクマがないと印象が全然違いますね。

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