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2007年6月 8日

モーターサイクル ダイアリーズ

- 貧困が最大の病魔  -

チェ ゲバラの青春時代の旅行を描く物語でした。ゲバラと太っちょの友人がバイクで南米大陸を旅します。

途中何度も転倒し、ついにはバイクが完全に故障し、テントも飛ばされて病気にもなり、妻の浮気を怒った亭主に殺されそうになるなど、様々なエピソードが散りばめられています。ただし、その描き方はウケ狙いの派手な表現ではなく、淡々とユーモラスに描くやり方でした。ダンスのシーンはありましたが、流行の踊りではないので見て盛り上がるわけではなく、穏やかな気分になるくらいでした。そのような描き方に好感を持てました。

ゲバラは喘息持ちで、吸入器を持参しての旅行です。昔の吸入器らしきものが出てきましたが、仕組みがよく分らない代物でした。現在は薬がパウダーになったり、勢いの良い噴霧器のタイプが主流ですが、昔はそんな便利な器具も良い薬もなかったはずです。いったいどんな薬を使っていたのでしょうか?それに、喘息持ちの人が満足な薬がない時代に旅行するのは、恐ろしいことだったと想像します。

脚本も映像のセンスも素晴らしかったと思います。登場人物のキャラクターに無理がないため、リアルさを感じました。特にいっしょに旅をする太っちょの友人、船でいっしょになる売春婦、ハンセン病の施設のシスター長の言動、表情は本当に「いかにも」という感じでした。よく当直の時に教会関係の病院の婦長さんと話すことがありましたが、婦長がそのまんま映画に出て来たような印象でした。

残念ながら子供には全く受けないタイプの映画のように思います。ですが、思春期くらいになれば逆に結構面白く感じる子も多いかも知れません。恋人と見ても特別に面白い映画ではないと思いますが、見終わった後の印象は悪くないと思います。中には退屈さばかりを感じてしまう人もおられるでしょうが、少なくとも出来の悪い作品だと思う人はいいないのでは?

登場した俳優達は全く知らない人ばかりでしたが、エキストラはテレビのドキュメンタリーで出てくる労働者たちがそのまま出てきたかのようなリアルな人ばかりでした。無表情なところが、いかにも南米風でしたし、彼らの視点が自然でした。よほどうまく統制しないと、視線がカメラに向かってしまうと思います。あの視線は、国や人種に関係なく、貧困者の視線です。たぶん困惑、希望のなさ、精神的な疲れ、うつ状態、思考する内容の停滞を表しているのだと思います。貧困は最大の病魔です。

太っちょの友人は実に魅力的な人物でした。つまらないウソをついていたことをラストに明かしますが、わざわざ別れ際にあんなつまらないことで謝るなんて、いかにもいいヤツだと感じることができました。少なくとも南米の人はゲバラのその後の運命を知っているだけに、登場人物たちが話している以上の意味を感じることができますから、最高の分かれ方だったかも知れません。

共産主義のことは特別強調してはいなかったようですが、途中インディオの夫婦が共産主義者だと言う場面がありました。確かに当時の南米の状況なら、圧倒的な貧困が最大の問題であると考えるのが自然で、共産主義に傾倒するのも自然しょう。日本も少し前まではそうでしたし、今後は再び格差の是正がうまくいかなくなって似たような状況になるかもしれません。ワーキングプアの青年達のルポをした番組を見たことがありますが、その感想としては日本の場合は革命はないとしても、暴動くらいは起こってもおかしくないかも知れないと思いました。南米諸国は日本より状況が深刻なので、共産主義国家ではないにしても、今でも結構反米感情の強い国が多いようです。

ゲバラは日本にも来たことがあったはずです。キューバの葉巻か砂糖か何かを輸入してくれるように交渉しに来ていたと書いてあったような気がします。キューバの大臣をしている頃でしょう。その後、再びゲリラ戦に戻って死んだしまったようです。早死にしたために、カストロと違って伝説のヒーローになってしまった感があります。実際にゲバラが若い頃に旅行したのかは覚えていませんが、彼の伝記にも書いてあったような気がします。

私もバイクで旅をしたくなりました。後部座席にはカワイ子ちゃんがいるといいですが。ラストは、きっと私達が喧嘩別れする場面でしょう。トホホ。

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