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2007年5月27日

RENT

- 見事だったよ   -

監督 ハリーポッターの監督だって

RENTの噂は、何かの情報雑誌で知りました。まだ、初演して間もない頃だったと思います。ある批評家が原作者のラーソンに対して書いていました。「ラーソン、見事だったよ。」 確かに、多くの人の鑑賞に耐えうる作品だと思います。子供が見て良いのか分りませんが、私は人類愛の観点から勧めてよいと思います。小学校高学年くらいからなら、解る子供は解ってくれそうです。

登場人物のほとんどがエイズウイルス感染者かゲイで、収入も少なく、悩みをかかえている極端な設定に驚きます。芸術家だから普通でないのは分るとしても、あまりにも我々とは違う世界です。でも同性愛に限らず、広く隣人を愛し助け合おうという、精神レベルの高さを感じました。

ストーリーは単純で、仲良くなったりケンカしたり、追い出されたり帰ったり、時々ショーがありましたが、あまりドラマチックな盛り上がりがあるわけではなく、小さなエピソードがいくつか繰りひろげられていました。そして、当然ながら死も。詳しい内容は、ここで紹介すべきではないと思います。配役は、オペラのラ ボエームから取ってあるそうです。

考えてみれば、このミュージカルの設定は、楽屋受けの内幕物とも言えます。ミュージカルの場合は、どうしても主役がダンサーや歌手であることが多くなります。現実に多いはずの一般労働者が踊り出すのは不自然ですし、脚本家自身がそんな人達から少々感覚的に遊離してしまっているため、内幕が多くなるのは仕方ないかも知れません。

この作品は芸術的には優れていると思いますが、その辺の遊離具合のためか、知らない人は全く知らないというタイプの映画になってしまいました。メジャーになり切れなかった感じです。出演者に誰かスターがいたら、もっと有名になっていたかも知れません。例えば、ムーラン ルージュは、この作品よりは知られていますが、この作品にニコール キッドマンが出演していたら、絶対観客は増えたはずです。彼女は大柄ですから、オカマのパーカッショニストのエンジェル役でも充分に演じられるでしょう。そしたら大評判になったのに!

現実の芸術家達が今どんな生活をしているのか知りませんが、けして優雅で健康というわけではないでしょう。エイズ患者は90年代よりは減っているだろうと思いますが、依然として病気の恐怖や生活の不安を抱えている人達は多いと思います。

原作者のラーソンも、日々の生活の糧ををアルバイトでしのぎ、とんでもないハードワークで作品を作ったそうです。書いてあった情報によれば、食事のほとんどはシリアルのような偏った内容で、作品を仕上げるのに5年以上かかり、曲も脚本もほとんど一人で書いたそうで、作品が初演される前日もアルバイトで深夜まで働き、そして急死したとのことでした。死因は大動脈瘤破裂だったそうですから、生まれつきの血管の脆弱性も関係していたのかもしれませんが。

ブロードウェーほどではないにしても、今の日本の若者の中にはストリートライブなどで明日の成功を夢みて頑張っている子達がたくさんいます。でもカップ麺が主食のような生活では、オーバーナイトサクセスを実感することなく急死しかねません。若者よ、食事には用心するべし。

明日の成功が夢見れるから、苦しい生活にも耐えられます。コーラスラインという作品が以前ありました。ダンサーとしての成功を夢見る若者達を描いていましたが、同じようにゲイが何人か登場して、キャラクター的には似ていました。この作品もテーマの一つは近いところにありそうですが、エイズのために設定がより深刻になっている印象でした。深刻なために心打つ反面、ミュージカルで笑いたい人には興ざめを生む結果になってしまったかも知れません。

私もサクセスを夢見て診療に励んでいます。サクセスといっても、職員に給料を払って生活ができれば良いという程度で、もう私の存在自体がボランティアです。さすがに食事だけは専門家で、極めて健康的な内容ですから、たぶん急死はしないだろうと思いますが、ワーキングプア状態ではあります。でも、夢だけはあります。

さて、作品中のナンバーのほとんどは名曲といえる出来栄えだと思いました。特に主演の一人のエンジェルが紹介される時のオカマチックなダンスナンバー、ストリッパーのミミが舞台で歌う曲などは、踊りの良さも相まって感動ものでした。いっぽう、歌手役がステージで歌う曲は、少しテンポが取り辛くて、ノレない感じがしました。

本当のプロであるロイドウェーバーのような作者は、そつがない曲の作り方をわきまえていますし、製作も大掛かりのプロ集団がやってるみたいですからアラが見えませんが、ラーソンの場合は荒削りな感じです。でも、実に斬新で才能を感じさせます。

全体にロック調ないし、初期のラップ調の曲で、ぜひ舞台で聞いてみたいと思いました。きっと迫力が違うでしょう。ヒヤリングを試みましたが、慣用句が多くてスピードもあるので、なかなか内容が理解できませんでした。あらかじめ、DVDで充分予習しないと何も理解できないだろうと思います。

不覚にも私は作品が映画化されていることも、日本でミュージカルが上演されていたことも知りませんでしたが、フラッと寄ったビデオ屋さんで、このDVDを見つけることができました。

感想は、「ラーソン、見事だったよ。」に尽きます。

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