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2007年1月22日

無防備都市

- 昔のリアリズムはおとなしい  -

イタリアン リアリズムの代表作として、名画名場面の特集などで繰り返し紹介される映画ですが、今はもっとリアルな映画がたくさんあるので、殺人のシーンさえおとなしくて迫力不足のような気がします。今は子供が見る番組でもグロテスクな死体が出てきますし、爆発も暴動も普通にテレビで上映されて、かっこいいもののようにさえ感じる子供がいるだろうと思います。

「戦場のピアニスト」でも、人を一歩前に進めさせ、前列を殺して人数を間引く場面など、リアルで恐ろしいシーンがありました。したがって今この作品が上映されても、非人道的行為が目立たないかもしれません。

ドイツに占領された当時のイタリアが舞台です。戦時中でも結婚しようという地下活動家と子持ちの女のカップルがいます。同志の地下活動家がゲシュタポに目をつけられて、彼の恋人を通じて徐々に追い詰められていきます。恋人は活動家が彼女を巻き込みたくなくて離れていることに耐えられず、かえって情報を渡して活動家がつかまる結果となってしまいます。女心は地球上で最も怖いものだと知りました。

子連れの女は、婚約者が連行されるので気が狂ったように車のあとを追ってしまい、簡単に撃ち殺されてしまいます。有名なシーンです。このシーンは今でも迫力がありますが、この迫力は主に彼女が駆け出すのを制止しようとする人達の力加減によるような気がしました。女性の力では振り払えないだろうと思えるほどの力が、彼女の動作でよく分ります。

安物のドラマでは、いかにも演技だといわんばかりの動作や目線が気になります。カメラを意識してしまって相手を見ていなかったりするヒドいシーンも時々見かけます。自分がどこを見て、力がどれくらい出て、それによって重心がどれくらい変化するかくらいは打ち合わせないとリアルな演技は出来ません。実際そうするとケガが絶えないでしょうが。

登場人物で最も魅力的だったのは美しいゲシュタポの女性だったと思います。これに対して、ゲシュタポの親玉はひよわな感じがして、冷酷さに欠けていたような気がしました。もっとゆっくり話させて、にくにくしげに演じさせたほうが我々としては良かったと思いますが、イタリアの観客からすれば彼があせってくれたほうが嬉しかったのかも知れません。

ところどころに監督の実験精神を感じさせる映像がありました。登場人物の移動に合わせて場面が変わる工夫は、昔の映画では珍しいと思いました。でも、効果的だとは思えませんでした。

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