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2018年7月15日

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(2017)

Shaft


- SHAFT -   


夏休みのある日、転校していく少女なずなをめぐって、友情と恋との狭間で、典道青年は揺れ動くことになる・・・DVDで鑑賞。   


この作品は劇場でも公開されていたそうだが、まるきり意識したことはなく、小説のオリジナル映画化版として初めてアニメ化されたものと思っていた。ところが調べてみたら、最初はテレビシリーズのひとつとして奥菜恵主演で放送されていたそうだ。「世にも奇妙な・・・」シリーズの後継番組らしい。娯楽番組は全くと言ってよいほど見ないので、この有名な作品のことも知らなかった。     

アニメ版の主題歌は知っている。「打ち上げ花火」は、よくかかった曲だから、この作品とコラボしているらしいことも聞いていた。若い人には通じるものがありそうな曲と思う。でも劇場主には、もっと静かでセンチな曲のほうが印象に残りそうに思える。曲調と作品とは、必ずしも調子が一致していない。


この作品はSFに該当するようだが、中心は青年の迷い、恋心と友情のドラマで、純愛ものと言えるのかも知れない。「君の名は。」に通じるものがある。人物の表情は区別がつかないほどだ。似たようなアニメ技術で作られ、人物の動作も似ている。この作品は、もし自分が違う行動をとっていたらという点に着目し、様々な物語が展開するという仕組みで、その設定は元々のドラマ版の設定をなぞっているようだ。   


花火や灯台をめぐる美しい映像は見どころのひとつになっている。女学生のお色気も魅力のひとつだろう。そういえば若い頃の奥菜恵は非常に色気があった。ただの美少女ではなく、お色気がある大人びた雰囲気が、この役には求められる。番組は見なかったが、奥菜の雰囲気がこのアニメ版にも残っているかも知れない。この少女役の声は、広瀬すずが担当していたそうだ。本当に良い声で、またまた広瀬かよと呆れながらも、たしかに適役だなと思った。実写版が再度作られるとしたら、今ならそのまま広瀬が担当するだろう。


ラストは尻切れトンボになっていなかったろうか?起承転結の転と結が少し肩すかしのように、インパクトに欠ける話だったように感じられた。途中の段階での、青年のウジウジした感情や少女の境遇に関してはよく描けていたと思うので、結末をどうするかが重要だったのだろう。 少し完成度を落としてしまったかもしれない。印象深くしないと、繰り返し見たいと思う観客がいなくなる。


作品の中での青年たちの会話は自然なものに思えた。今の子供たちは、おそらくテレビドラマに影響された話し方をしている。流行に流されて、早いスピードで話し方が変わるのは、テレビ独特の影響だろう。言葉によって、思考パターンも影響されてしまうように思う。それが良い方向、すなわち現実を的確に把握するのに有利であれば好ましい表現だ。単純化され、なんでも「ざけんじゃねーよ」「マジだせえ」で評価するクセがつくと、微妙な評価ができないまま成長し、正しい判断ができなくなって失敗したり、表現力が高い人達に相手にされなくなるかもしれない。


深く考えるためには、それなりの言葉が必要だ。「ざけんなよ」だけじゃ、理屈をめぐらせることは難しい。


 

2018年7月12日

オリエント急行殺人事件(2017)

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- FOX -


アガサクリスティ原作の推理小説の映画化作品。前回は1974年にアルバート・フィニー主演で制作されていたが、今回はケネス・プラナーの監督、主演で作られていた。  


制作の意図が最後まで理解できなかった。もしかするとCGを使って列車の移動の様子を迫力たっぷりに描こうという狙いがあったのかもしれない。さらに、列車の窓の中と外で視点を自由に移動することも、今なら可能だ。クレーンやドローンを使って、視点をダイナミックに変えて表現したい、そんな技術的な欲求があったのかもしれない。   


有名俳優を集めれば、前作と同様の集客効果も期待できる。そのような内容を提示して企画が通り、予算が集まったのだろうか? 列車の動きの迫力に関しては、前作より断然素晴らしかった。迫力がありすぎて、あんなにスピードを出したまま雪山に入ったら、簡単に脱線するだろうという不自然さも感じたくらいだ。いっぽう駅の雑然とした雰囲気や、機関車の煙が立ち込める様子などについては、前作のほうが懐かしいような感覚が感じられ、この作品のほうが演出臭い印象を受けた。  


ケネス・プラナーとアルバート・フィニーでは、個性の面では断然後者のほうが際立っている。小説の表現から考えると、ポアロは小柄で偏屈で、異常な人格の持ち主と思えるが、この作品のポアロは普通の学者のようにしか見えない。もっと特殊なメーキャップしても良かったのではないだろうか?


最後に推理を披露するシーンも、原作とは違っていた。さながら最後の晩餐の絵のような長いテーブルが用意され、寒い外で、おそらく現地の人達にも聞こえそうな大声で話がなされていた。あれでは現地の警察に逮捕されてしまいそうだ。列車の中でもよかったのではないだろうか?風邪ひくかも知れないし・・・  


「ナイル殺人事件」の予告みたいなシーンが最後にあった。もし、この作品に大変な人気が出て、今後の予算が確保されるなら、続編ができるかも知れない。でも劇場主は、次回作を見たいとは感じなかった。よほど斬新なことをしない限り、期待感を持って鑑賞することはできない。有名な作品をリメイクするのは勇気が要る。それをやれと言われても、どうやったら良いのか分からない。 


おそらくCGの技術だけでは難しいのではないだろうか?  悪役が善玉に変わるくらいの、大胆な変化が望まれる。もし今回の悪役が弱々しい風体で、必死に命乞いをしているのに無残な殺され方をするとしたら、犯人達と悪役のやりとりは非常に現代風になるかも知れない。イスラム国をめぐる報道映像を思い出したりして、見ていて辛くなるだろう。誰からも好かれていたアームストロング大佐が、実は戦地で悪役氏の家族を犠牲にしていて、その復讐が根底にあったのだとしたら、どっちが正しいのか分かりにくくなる。犯人たちは激しく後悔するラストになり、観客もどう考えてよいのか分からなくなる。   


そんな、よく分からない事態こそ現代風ではないか。でも、それは興行的には最悪の選択になりそうな気もする。

 



2018年7月 9日

ケインとアベル(1979)

Photo

- ジェフリー・アーチャー著 -      

 

ポーランドで孤児として生まれたアベルと、ケイン家の跡取りとして銀行家の家系に生まれたケイン。彼らは成長し、やがて対決する運命にあった・・・新潮文庫の文庫本を購入。   


なぜ買ったのかは覚えていないが、作者のアーチャー氏の名前は有名だし、小説らしい小説を読みたかった関係で、たまたま見かけた本を直ぐ買いたくなったのだろう。カズオ・イシグロの作品を読んだ後、文学にやっと目覚めた。それまでは小説を楽しむという感覚がなかったのだが、ここにきて変わっている。    


この作品は映画にはなっていないらしいが、テレビドラマ化はされているそうだ。ただし観たことはない。たしかに大型のTVシリーズとして作るには、良い材料になりそうに思う。様々な人物たちの愛憎が渦巻くからだ。 ポーランドの分割やロシア革命など、激しく動いた時代を舞台にした点もドラマ的だった。   


カインとアベルではなく、ケインとアベルとしたのは、一種のシャレなのかも知れない。対立や不幸な結末を予想させるから、設定には便利と考えたのだろう。彼らが兄弟だったわけではないし、聖書のような殺し合いにまでは発展していなかった。ケインに神様からの印が付いたりするわけでもない。でも、少しそれを連想させるためだろうか、軽い奇形は生まれつきあり、カインの神の刻印を意識していたに違いない。抜き差しならぬ対立は、物語を面白くしていた。いかにもテレビに向く設定だった。    


でも、小説を読んで思ったのだが、アベルとケインの個性は必ずしも際立って感じられるとは言えないようだ。二人とも似たような個性の、有能な事業家、銀行家という印象。たとえばケインは冷徹、非人間的な個性かというと、極めて人間的な面も多い。それなりに悲しい経験も続いているので、裕福なお坊ちゃんではない。アベルのほうは明らかに過酷な運命をたどっているが、途中から急に幸運に恵まれて、少々出来過ぎの人生のようにも感じる。   


ケインが特に執念深いとか、手段を選ばないとかいった強烈さも感じられない。普通、思いがけない成功をおさめた人間は寛大になる傾向がある。ありえないほど出世したケインのような人物が、恩人の敵とはいえ、アベルの破滅を狙うだろうか? 設定を変えたほうが良かっただろう。    


アベルが復讐を心に決めるまでの経緯は、解説はされていたものの、唐突にそうなったように感じた。何度かの経緯が必要だったのだろう。翻訳された文章のせいかもしれないが、ストーリーだけをとっても、必然性が表現できていたとは感じない。本格小説ならば、もっと違った表現があったのではないかと思う。    


必然性を感じさせるためには、おそらくアベルを認めたテキサスの富豪は、アベルがまだ社会の底辺にいる頃に出合い、家族ぐるみで彼を支援してくれた大恩人であり、娘とも良い仲でなければならない。結婚を前提にしていたのが銀行のせいで破談になり、恩人家族は全員破滅といった極端な設定が必要だと思う。殺意を覚えるほどの対立が、この作品では設定しきれていなかったと思う。    


米国の銀行の頭取は、遺言などで決まるものなのだろうか? 資産家一族が代々銀行を運営するという話は、欧米では珍しくなくても日本では考えにくい。日本でも取締役会に親子で参加する家族はいるだろうが、遺言に従って急に外部の人間を連れて来ても、役員の了承を得るなどまずありえないだろう。いかな欧米の話とは言え、劇的な展開にしようとして無理をしたのではないか? アーチャー氏は有名作家だが、本当の小説家ではなく政治家、事業家が本業だと思う。特異な経験で本を売ったが、細かい設定に関しては、本職ではない印象を受けた。




2018年7月 6日

BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント(2016)

Bfg

Dizney


施設に暮らす少女が巨人の国で暮らし、凶暴な巨人たちと戦う羽目になる話。DVDで鑑賞。 


この作品のBFGは、実際の俳優であるマーク・ライランスと顔がよく似ている。動作に関してはモーションキャプチャーを利用して画像が作られているようだ。顔まで再合成した意味はよく分からなかった。俳優が誰か分かりやすいという点では良いかも知れないが、それが必要なことかどうかは不明。   


ヒロイン役は少しボーイッシュな印象を受けるルビー・バーンヒルという少女。これ以外の作品に出演してはいないらしい。演技が上手いかどうかは分からない。演出は、学芸会レベルに近いような印象を受けた。オーバーに手で顔を覆ったり、古いタイプの仕草が目立った。ディズニー映画だから、あまり妙なことはできないので、仕方ないのかも知れない。   


監督はスピルバーグ。いつの間にか、彼の作品だから観なきゃとは思わなくなっている。さすがの大監督も、最近はメガヒットを飛ばすことは期待できない。内容が子供っぽかったり、斬新さを感じなくなっているようだ。もともと障害を持つ人らしいので、年齢が関係して演出手法が固定されてくる運命なのかも知れない。 でも一定程度の面白さ、一定レベルの仕事は確実にやってくれると期待できる。そつのないないアベレージヒッターとして、いまだに現役選手だ。優秀なスタッフも大勢ついているんだろう。     


この作品には原作があるそうだ。イギリスでは童話が限りなく作られ続けているらしい。魔法使いやライオンの王様など、いまさら何が珍しいんだろうとバカにしていると、とんでもない人気シリーズが出来上がってしまう。幼稚な内容だとバカにしてはいけない。立派な映画シリーズになり、テーマパークの一角を占めることで、産業にさえなる。一種のイノベーションが起こり続けていると考えるべきだろう。伝統と、再利用、再評価が常になされている点を評価しないといけない。    


ただ、このBFGはテーマパークになるほどの人気は出ていないと思う。理由はいろいろ考えられる。   


まずBFGの表情が冴えなかったように思う。むしろ昔のアニメのような方法のほうが、自由な表現が可能になって、より面白い雰囲気を作れた可能性がある。マーク・ライランスにはとぼけた雰囲気があり、かなり無表情なのが特徴とも言えるので、この作品には向かないのではないか?子供映画なので、むしろオーバーな表情をする喜劇俳優が演じたほうが、ドジで優しい愛すべき性格を表現できたと思う。CG合成するのだから、演技力は関係ない。オーバーであること、見た目だけで笑わせることができるかどうか、それが映画用に必要な個性だったと思う。   


あるいはBFGの個性に問題があったのかも知れない。優しいだけじゃなく、狡くて妙なクセを持っているようなヒネた個性のほうが、観客の支持は得られたかも知れない。欠点が多かったほうが、逆に好かれる傾向はあるものだから。


 

 

 

 

 

2018年7月 3日

シュー・ドッグ(2017 )

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- 東洋経済新報社 -


ナイキ創業者の一人だったフィル・ナイツ氏の自伝。波乱万丈の企業家人生が描かれている ので非常に面白い。読んで勇気が出るような、読後の精神高揚効果のある作品だ。映画化されそうな気もする。  


成功者の話は楽しい。当たり前だが、途中がどんなに苦しくても、最後には克服できると分かっている。ナイキも途中は綱渡りだったようだが、大成功したと皆が知っている。  


この本を読むまで、ナイキとアシックスに因縁があったことを知らなかった。ナイキとアシックスの間で裁判をするなら、本当は全員マイノリティの陪審員に判断させるのが適切だったかもしれない。差別意識の要素は大きいからだが、まあ現実には無理だろう。米国の裁判制度の中で勝つのは難しい。 


どちらがどちらとも言い難いが、アシックスが損した部分は大きかったと思う。ノウハウのかなりの部分が持っていかれたようだ。アシックスの人員もナイキ側の工場に移ったと言われているので、言い方はなんだが、アシックス側としては技術が盗まれたという印象を持っているのではないだろうか?    


ナイキ側が最初からそれを意図していたかどうかの証拠はないだろうが、まったく考えてもいなかったとしたら、ナイツ氏は大バカ者だ。工業製品は安い工賃で作り、追加のアイディアを盛り込んで、良いイメージを作ってたくさん売るのが基本なので、盗みは日常茶飯事でもある。アシックス側も技術流出は覚悟しないといけない。ナイツ氏が盗まなくても後進国はコピーしてくる。それらより高いレベルで戦えるように、努力を続けるしかなかった。   


ナイキ側には有利な点が多かった。バウワーマンという有名なコーチがいたことで、製品のアイディアと宣伝効果が最初から備わっていた。彼が創業に関わっていなかったら、会社の設立さえ難しかっただろう。いかにナイツ氏が優秀でも、オレゴン大学に進んで陸上競技をやり、バウアーマンと会っていなかったら、スポーツをネタに商売ができるという発想すら生まれなかったかも知れない。 


ナイツ氏の視点も素晴らしかった。技術に優れた日本の工場を使えば、ドイツの靴に対抗できるかもしれないという視点が、そもそも適切だった。アメリカで靴を作っても、勝負にならない。価格と技術のバランスを考え、生産場所として日本を選んだのは当時としてはベストの選択だったろう。 優秀な部下や、優れたアイディアマンが集まってくれたことも幸運だったと思う。本人のキャラクター、運営スタイルも良かったのだろう。      


劇場主の印象では、40年前くらいに急にナイキブランドが流行りだしたが、全く未知の斬新な会社であり、シューズより先にシャツのほうに印象が残った。新しく、斬新というイメージがした。イメージ作りが上手かった。そのナイキが長いこと経営破綻の瀬戸際だったとは、思いもよらなかった。   


売れたのはアディダスが第一。やたら高かったけど、ボルグが着ていたフィラも有名。同じころ、安めのプーマ。もっと安いカッパ。そんな風に、値段やイメージの違う会社が色々あった。数から言えばアディダスやミズノのほうがメジャーで、アシックスは性能の良さに感心はしていたものの、商売下手なのか、数的にはミズノのコーナーのほうが広く、品ぞろえも良いことが多い。いまだに、その傾向を感じるが、熊本だけの現象だろうか?   


自分の会社で工場を持つのではなく、安い労働力と優れた技術のある地域で生産し、ブランドイメージで売るというシステムが、あらゆる業界で進んだ。ユニクロなど、衣料品はほとんどそうだし、スマホやタブレットもそうだ。巨大な工場を持つことにこだわった日本企業は大きなダメージを受けた。各社ともそれなりに海外に進出したが、米国の他国籍企業ほどドライにやれなかったのではなかろうか?     


だが、その流れがいつまでも続くとは限らない。米国だって国内の産業は必要だろうから、今後はシステムが変わらざるを得なくなると予想する。ユニクロ税、ナイキ税など、企業の形態、場所に応じて管理すれば、多国籍企業の税金逃れもやりにくくなるから、米国だって考えるのではないか?  ナイキのようなグローバル・システムも、やがて生き残れなくなる日が近いかも知れない。その時、自社工場を持つアシックスが、世界を席巻する可能性だってある。アシックスは、とにかく本当に良い品を作るから。 





2018年6月30日

キングズマン:ゴールデンサークル(2017 )

Kingsman

 Fox -


イギリスで仕立て屋の姿を借りる、私設の情報機関の物語の第二作。今回は前作で殺されたはずの上司が、思わぬ場所で生きていたこと、アメリカの諜報機関や、麻薬組織とのやりとりが展開する。DVDで鑑賞。   


このシリーズは、知る限り熊本市では劇場公開されていなかったはずだが、大都市でなら興行的にも成功するかも知れないと思う。実に痛快な作品だ。     


前作も意外なほど面白い作品だった。原作はコミック本らしい。原作のアイディアがよほど優れていないと、そもそも映画化しようという話は持ち上がらないだろう。いまどきスパイもので大ヒットするなんて、ちょっと考えにくいはずなんだが、この作品は第一作、第二作とも実に上手くできていて、古さを感じさせない。作り方が上手いと感心する。 原作も優れたアイディアを有し、製作者たちも優れたセンスを持ち、ソツのない作り方をしているに違いない。    


独特の個性や意外性を出さないと、この手の作品はすぐ飽きられるだろう。もはや007だって、昔のままではやっていけない時代であるから、他のアクション映画とは違う、独特の魅力を出さないといけない。派手なカンフーアクションだけでは、おそらくジェイソン・ステイサムの映画に敵わない。殴り合いのリアルな迫力では、おそらく「アトミック・ブロンド」のようなアクション専門の監督が撮った作品には敵わない。 気取った紳士的所作とユーモア、個性的な敵の活躍、リアルじゃないけど道具を上手く使う独特の戦い方、それらが新しい魅力を生んでいると思う。 


さすがに十作以上も続編が続くとは思えないが、当面は今の路線で行けそうな気がする。 ただし、子供たちに受ける作風ではないような気もする。もっとユーモアたっぷり、失敗を繰り返すドタバタ劇にしない限り、家族がいっしょに楽しめる感じはしない。残虐なシーンもある。このままではジリ貧も免れないのではないか?   


有名俳優たちがいろいろ登場していた。 資金が豊富なのか、ヒットに自信があったのか、主役でないにも関わらず、ハル・ベリーやチャニング・テイタムなどが楽しそうに役を演じていて驚いた。次回作では彼らが仲間となって活躍する、そんな契約を結んでいるのかも知れない。そうなるかどうかは、原作漫画を読んでいないから分からないのだが、そんな気配を感じる。 そうだとすると、その点は少し安易すぎるかも知れない。   


 



2018年6月27日

「お金」で読み解く日本史(2018)

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- 島崎晋著・SB新書 -

 

日本人が金銭に関してどのような感覚を持っていたのか、その歴史は気になる。かなり浅ましい行為が日常繰り広げられているのを目にすると、日本人の金に対する狂乱ぶりが諸悪の根源ではないかと思うことがある。狂乱する人間には劇場主をも含めないといけない。日頃の買い物でも、1円でも安く手に入れ、給与を1円でも少なく支払い、1円でも多く貯めたいと、日夜ギリギリの戦いを展開しているのが現状である。 

 

家内が最大の敵で、使うこと、夫から奪うことしか考えていないのではないかと思える狂乱ぶり。どうしてもっと落ち着いて、互いの信頼関係を重視してくれないのだろうか? その謎を解き明かす目的もあって、この本を購入した。しかし、残念ながら本には家内の行動の謎は書かれていなかった。 歴史家をもってしても、彼女は謎なのだろう。  

 

この本の優れたところは、その主眼、視点にあると思う。日本人の金銭意識は、おそらく国の歴史を決めて来たはずだ。よくも悪しくも、金銭への欲は集団の意志を左右し、大きな流れを決める。人々の欲を知るのは大事なことだろう。 

 

今の日本は、上から下まで目先の金に目がくらんで、長期的な展望を失っている気がする。 展望を見出しきれていない・・・そんな状況から抜け出せていない閉塞感がある。 

単純な言い方をすると、中国が世界の工場となって価格破壊が起こってしまったので、生産拠点を移さざるを得なかった。それが大きな流れだが、あれも諸外国との競争に勝ち、金を得るためだったはず。でも、そうすると生産しないで金を得るしかなく、基本的には国内の景気を良くしようがない。一部の会社だけしか儲からないだろう。生産が減っても、トリクルダウン方式に社会全体が豊かになれるものだろうか? 企業や経済学者たちは間違っていないだろうか?  

 

そして人口が減るのも自然な流れだろうが、一気に減るとかなり悲惨な状況になる。でも、その対策のための予算は少なく、景気対策のほうが重視されている。正しい戦略を考えているとは思えない。目先のことに目がくらんでいないと誰が言えるだろうか? 生産の場は、子育ての場にもなる。一部の会社が巨大化しても、低収入で子育てを諦めた家庭が増えたら、その社会は不健全だと劇場主は感じる。だが学者や役人たちは、そう考えていなかったようだ。

 

そもそも、この本は読者の納得を期待していないような印象を受けた。歴史家という人種は、データの記載にはこだわらない性格なのだろうか?この本は根拠に相当する分を省いたまま解説が進んでいる。あるいは、たまたま氏がそんな考え方なのか、新書の性格を考えて分析めいた書き方を排除し、根拠不明のまま断言を繰り返す文章にしたのか? 

 

著者は経済学者ではなく、学者と言えるかどうかも微妙な方らしいので、分析を省略したのは当然かも知れない。読みながら、納得できないまま前に進まざるを得ない印象を受けた。この本が論文ではなく、随筆に近いものなら、いちいち根拠を述べる必要はない。そんな考え方もあるんだろうねで、軽く読み流せばよかったのだろう。評論家の多くが、そんな人たちなのかも知れない。   

 

政治家だって似たようなものだ。政治家たちは声が大きいし、確固たる信念を持って活動しているかのように見えるが、根拠のない思い込みによって誤った行動をとっているだけなのかも。正しくなくても、けして譲らないなら立派に見えるものだ。政府首脳の答弁や、ラフプレー後の日大アメフト部の元部長さんの会見映像を見て、そう思った。あんな人達が指導者では、今後に希望を持つのは難しい。    

 

希望を持てないなら、もう国に期待はできない! 日々の金儲けに熱中しよう・・・あらま、また狂乱してら。結局、この本からは何も学べなかったというのが結論。   

 

 

2018年6月24日

スターウォーズ 最後のジェダイ(2017)

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- Lucasfilm,Dizney - 


帝国軍に追い詰められた反乱軍のパイロット達、ジェダイの生き残りのルークを探して修業を積みたいヒロイン、なにかのトラウマにつかれている様子のルーク、帝国軍の中で自分の立場に苦悩するカイロ・レン。それぞれの戦いを交錯させた物語。エピソード8に相当するらしい。DVDで鑑賞。

 

この作品は2018年の日本の興行収入でしばらく1位だったらしい。その記録は名探偵コナンに抜かれるだろうとの報道だったが、この作品が1位を占めていたことに驚いたくらいだ。際立つほど面白い作品とは思えない。過去のシリーズから生まれる期待はあるだろうが、この作品単独で評価したら、失敗作に近いレベルだと思う。   


盛り上がりの要素に欠けていることは間違いない。製作者たちはいろいろ考え、工夫を凝らしたのだろうが、どれだけ精緻に作ったとしても、盛り上がらなければ仕方ないと劇場主は考える。なにかの根本的問題があったはずだ。   


よく出来ていた点も多かった。敵の戦艦が爆発するシーンは、ただの爆発ではなく、複雑な爆発の連続によるリアルで迫力のあるシーンで、実に美しかった。艦船に残った司令官が敵に突撃したシーンは、なかなか鮮やかな表現で、これもよく出来ていたと思う。CG技術者たちの腕は相当なものだ。  


欠けていたと思えるものは、敵のキャラクターかも知れない。魅力的な敵が欲しい。性格が陰湿で、手ごわくしぶとく、誰もが嫌いになる存在。今回は敵の首領がそんな存在だったが、もっと低いレベルの実働部隊のほうが良い。首領は圧倒的な力を持って、味方がただ逃げ惑うだけの怖い役割で良い。現場のレベルでは性格の悪い連中がイジメにも似た悪行を繰り返し、観客の怒りを溜め込ませ、ラスト近くで一気に逆転させて快感を狙う、そんな展開が欲しい。   


ベニチオ・デル・トロが出演していたから、これはどうやら猛烈に濃いキャラクターが登場したかと思ったが、肩すかしの術を浴びたかのような妙に小さな役割で終了してしまった。 敵の艦船に侵入した作戦は、せっかくだから成功してほしかったが、結局なんだったのだろうか? 全体に、今回は味方が活躍して敵を倒すシーンが少なかった。あれでは満足することはできない。    


戦いで満足できないなら、ドラマ部門で満足するしかないが、今回のルーク君はイジイジとしているだけで、共感するのは難しそうな印象を受けた。共感しないなら、ドラマ部門で盛り上がることは期待できない。 多数の観客が来てくれたのは、あくまで過去の栄光の故だたったのだろうと思う。     


味方の側の、黒人の元兵士と東洋系の女のキャラクターもよく分からない。今後も活躍させる方針なんだろうか?かってのハン・ソロは憎まれながらも、最後は味方になってくれて結局は一番のヒーローになった。今回の二人は、ハン・ソロより真面目で、キャラクターとしての面白みには欠ける。ここはデル・トロ君が活躍でもしない限り、その方面の面白さは期待薄となる。


 

2018年6月21日

知らないではすまされない自衛隊の本当の実力(2018)

Sb

- 池上彰著・SB新書 -


時事問題に関しての、当代きっての権威である池上氏による自衛隊の解説本。何かの番組を題材に、書籍化したもののようだ。本の最後のほうでは北朝鮮からミサイルが発射されたときに、どのような対応がなされるかが書かれている。   

 

自衛隊を廻る環境が変わり、興味を持って購入。あまり内容を確認しないで購入してしまった。タイトルと違って、実力がどうかは書かれていない。他国との細かい比較が載っていないので、読んでも力が分かるはずがない。   

 

本には明解な図が挿入されていて、よくまとめられ、読みやすいし理解しやすい。優れた編集者、イラストレイター、作業者たちが関わった本のはずだ。 池上氏は膨大な数の本を出しており、テレビにも頻繁に出演し、新聞にも多数の投稿をやっている。恐ろしいほどの活動量だから、秘書に相当する人達は多数いるに違いない。資料を集めて整理し、間違いを検証していかなければならない。とても独りで仕事はできない。おそらく池上氏は監修者に過ぎないのではないかと想像する。   

 

氏は自衛艦に実際に乗ったことがあるそうだ。自衛隊の側も広報活動は必要だから、著名人の池上氏を使って広く自分たちの活動を知ってもらいたいに違いない。最近は一般人も時々船に乗せたりして、身近な存在、信頼できる存在として認めてもらおうという活動もしている。6月17日は民放局の番組で、杉村太蔵氏が潜水艦に乗船していた。まあ国の予算を使っている以上、もっともな活動だと思う。   

 

自衛隊の主な仕事は、今は災害や遭難救助なのが実情。災害の時は本当に頼りになる。消防隊や警察だけでは装備や人員の面で無理がある。その意味では自衛隊は必要であるし、その認識は既に広く国民に認知されたと思う。災害救助隊ではどうかと言う人がいるかも知れないが、侵略だってやがてはあると考えないといけない。自然災害だけで済むはずはない。

いまさら自衛隊解散!を求める奴は少ないだろう。 法的に問題があることは確かで、その整合をどうやるかが問題である。発足時に無理をしているから、常識的に言って法律的な整合性は怪しいと思う。存在自体が違憲と言われても仕方ない。これを国会で政治家たちが論戦して決着できるものだろうか? どんな結論であっても、イデオロギーが絡んで、結局は強行採決されるしかないのでは?    

 

もしかすると、実際に戦争の危険度が上がり、このままでは侵略される可能性が高いと認識されれば、自動的に改憲を支持する世論が強まり、憲法改正が簡単にできるかもしれない。そうなれば自衛隊の存在は法的に確立することになる。 それで間に合うのかという問題はあるが、平和な時に憲法改正を進めるのは、よほどな信頼がないと難しい。今の政府のように、国のことよりも友人達のことを大事にし、嘘ばかりついて責任逃れをするというイメージがつくと、改正への意欲はかなりそがれてしまう。改革には信頼が必要だ。   

 

自衛隊にも信頼が足りない。日報に関して改竄や隠匿、組織内部で情報の管理に問題があったことが明白になったので、どうやら今の自衛隊も旧日本軍と同様、勝手なことをやりそうだという認識が広まってしまった。隊員が頑張っても、上層部の認識が甘く、国民より自分たちの都合を優先する組織であると宣言してしまった。管理能力から考えて、戦いの実力も限られているような気がしてくる。米国製の優れた武器を持つ分だけ有利だとは思うが、実戦で厳しい状況に立った時、意外にもろさを露呈しそうな予感はする。平気で国民を裏切るかもしれない。    

 

ただ、どの国でも多少はそんな傾向があるというものだ。情報操作は日常茶飯事であり、勝ったものが正しいと思われてしまっていると思う。

 

 

 

2018年6月18日

ひるね姫~知らないワタシの物語(2017)

Warner_bros


- 神山健治・ Warner Bros. -  


居眠りする女学生が主人公。彼女は夢の中で機械都市の姫様になるが、現実世界の自分の境遇と夢が連動していることに気づく・・・・DVDで鑑賞。  


この作品はDVDの予告編でさかんに宣伝されていたから知ってはいたが、さほど興味を持てないまま、鑑賞を延ばしていた。やはり固定観念としてだろうが、アニメはしょせんアニメであり、子供のためにあるもの。老年にさしかかった人間がわざわざ観るのは、なにか自分が幼くなったような、情けない気がする。時間がもったいないこともあるし、そんなテライめいた感傷が働くのかも知れない。いまさら気取ってもしょうがないんだけど・・・   


それに、夢と現実が交錯する話なんて、掃いて捨てるほどあったし今更ねえ・・・そんな意識もあった。よほど斬新なことを盛り込まないと、まさか満足はできないだろうねえ・・・ 


鑑賞して、素晴らしい出来栄えの、完成度の高い優れた企画だと感じた。レベルの高い仕事だった。この作品が優れている点は、東京オリンピックの頃を時代設定に用いていたこと、スマホやタブレットを駆使する現在と、自動運転技術という今後の問題を扱い、さらには親と子供、田舎と都会、男女の関わりなど、日常の物語も挿入されていることなどだろうか。入念に企画を練った様子が感じられ、感心する。


居眠りを設定に使う話は多い。夢と現実が交錯する話は毎年のように作られている。手塚治虫の漫画「ジェットキング」は面白い小品だった。居眠りの間だけヒーローになる弱い少年が、現実とかぶる登場人物たちと戦ったり、仲良くなったり、夢にあふれる話だった。設定はよく似ている。より多くのものを盛り込んだようだ。 


敵の個性が大事だったかもしれない。あまり憎まれないタイプの重役が悪役だったようだが、もっと怖い存在がいたらどうだったろうか?戦いの興奮度は上がったのではなかろうか? 


アニメの動きに関しても改善の余地があるように思った。特にヒロインが走る仕草には改善が必要だろう。体重を上手く表現できないのは、もはや許されないと思う。ピクサーによるCGアニメは、動きの自然さに関しては数段上を行く。あれを観た人は、あのレベルの動きを要求してくる。この作品の動きに関する表現は、全般にかなり古くなったものを感じる。建物や風景に関しては今の日本のアニメも進歩したが、人物の動きの表現に欠点がある。


微妙なもので、重力や体重、加速度などの感覚が表現できれば良いだけなんだろうが、おそらく人の手でいじるのではなく、コンピューターによって加工すべきものなのだろう。巨額の資金が必要で、まだ入手できていないだけなら、今後バージョン落ちのピクサーソフトを購入できれば、十分に使えそうな気もする。既に市販されたソフトにも、そんなものはないのだろうか?


あるいは中国の違法コピーを購入する手もあると思う・・・・いや、違法だからダメだ。   

 

中国と米国は、知的財産に関する権利を中心としてもめている。両国が互いの関税を上げると発表し、貿易戦争のようになりつつある。違法コピーは中国だけじゃなく、日本も韓国も酷かったが、中国の場合は米国の司法行政の力が及びにくい点で特殊だ。欧米は権利のために平気で戦争をしてきた。中国が少しでも弱みを見せれば、情け容赦なく権利を追求するだろう。もちろん中国だって長いこと欧米や日本に権利を蹂躙されてきたから、簡単には引かないだろう。     

 

ただし思うのは、貿易の交渉は数十年単位で積み上げるべきものと思う。大統領が交代して、急に「俺は許さん!」などと方針が変わるのは、混乱を生むだけだろう。結果に責任を取れるなら良いが、今の大統領には、そんな気もないはずだ。







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