映画評

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2018年4月22日

アトミック・ブロンド(2017)

Atomicblonde

- Focus Features  

 

MI6から派遣された女性スパイの活躍を描いた作品。活動の舞台は東西ドイツ統一直前のベルリン。そこでKGBや現地エージェントとの闘いが起こる・・・・DVDで鑑賞。   

 

デビッド・リーチ監督はデビッド・リンチとは別人のはず。まぎらわしい・・・。もともとはアクション部門を担当していたようだが、独特のセンスがあるらしく、アクション映画の総監督になっている。確かに斬新だった。殺陣に関しては、現在の最高峰かも知れない。  

 

階段で敵が倒れる時、後ろ向きに落ちていた。あれは観ていても本当に恐ろしいアクションだ。頭を打つことは確実で、下手すると首を損ねて一生寝たきりになりかねない。あんなシーンを考えつくなんて、よほどな技術がないと無理だろう。凄いシーンだった。   

 

「ジョン・ウィック」シリーズを監督していたから、動きが遅い俳優でも立派なアクションスターに仕上げることができると分かっている。 殴り合いの途中で互いにへたばって、よろけながらも戦うシーンも何度かあった。他の作品でも似たような描き方は見たことがあるが、特にへたばり具合に特徴があったと思う。少し強調しすぎて、かえって不自然になった印象も受けたが、カンフー映画のように一方的に敵を倒すばかりではおかしいので、リアルな格闘シーンの描き方と言えるかも知れない。  

 

この作品の制作の中心は主演のシャーリーズ・セロン御自身だそうだ。漫画の映画化権を買って、長い時間をかけて作品に仕上げたらしい。彼女も40歳くらいの歳になって、この種の作品のヒロインとしてはかなり無理もあったはずだが、もともとが凄いスレンダー美人なので、ギリギリながら体力がもっていたようだ。動きも素早く見える。でもヌードは、若い女優さんだけが担当したほうが良いかも知れない。スレンダーだが、特にヌード向きの体型ではなかったように思った。  

 

この作品は結構売れたらしいが、続編が作られるだろうか?セロン嬢の年齢を考えると、数年以内に作らないと難しいだろう。もし作ることが決まった場合、どのようにアクションを仕上げるのか、その点は腕の見せ所になる。顔の演技に関しては問題ない。動きがどうかに注目してみたい。偏見かも知れないが、セクシーで動きの良い新人女優が演じたら、もっとヒットしていたのかもしれないと思う。スパイと女優には賞味期限があると、偏った視点でだろうが思う。   

 

2018年4月19日

ビリー・リンの永遠の1日(2016)

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- Columbia etc -

 

イラク戦争で英雄になった主人公は、帰還中にショーに駆り出される。疑問を感じながら出演するが、戦地のことが回想される・・・DVDで鑑賞。 

 

戦争が兵士たちに及ぼす影響の一面を、独特の視点で描いていた。おそらく普通の兵士は英雄になろうと考えるより、生き残りたいとか金銭的なことなどを考えるものだろう。PTSDになりそうになりながら、なぜ戦地に戻るのか?その迷いが上手く表現され、確かなレベルの芸術性が感じられた。 

 

監督はアン・リー。映像が非常に美しく、高性能のカメラを使い、3Dを基本にしてあるようだ。メイキング編の解説によれば、あまりの高解像度のために、役者達には演技臭い演技をしないように注意が出されたという。技術の進歩は、映画の作り方や俳優の演技の仕方にまで変化をもたらすもののようだ。でも実際の演技が特に斬新だったとは思えない。役者の能力のせいかもしれないが、真にリアルに演じ切れていたか疑問は残った。

 

主人公を演じていた俳優は初めて見たように思う。特に何が優れていたか分からなかったが、悩める普通の人物の雰囲気は充分に感じられ、この作品には向いていたかも知れない。ヴィン・ディーゼルがなぜか出演していた。彼のキャリアから考えると、この種の作品には個性が合致していないように思う。彼が有名になったのは、どちらかといえば二級品の、格好つけたアクション映画によると思う。リアルさが要求される映画で、彼はミスキャストだったのではないだろうか?そんな気がした。 

 

戦闘シーンについても、かなりの迫力はあったが、今は凄い映画も多いので、特別に臨場感で他より勝っていたとは感じなかった。音響や、アクション映画に必要なセンスの面で、専門のアクション映画に劣る部分があったかもしれない。でも新兵たちが緊張している様子の表現は優れていた。口や手が震えていることなどは、的確に描けていたと思う。  

 

この作品の特徴から考えて、戦闘シーンはもっと長く、もっとビビった様子が描かれていたほうが良かっただろう。無残な死体を見せられて、恐怖におののくシーンがあったほうが良い。 ゲリラの反撃で参ってしまうシーンも欲しい。そして繰り返す緊張、疲弊によって精神に影響が出ていく様子が描かれたほうが絶対に良い。戦地の緊張したシーンに、もっと時間を割くべきだったと思う。  

 

2018年4月16日

『サルの惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』(2017)

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- 20C.Fox etc. -

 

人間に圧迫されたサル軍団は兵隊達に襲われ、家族や仲間の多くを失う。そして兵士たちの砦を作る作業を強制される。「なぜ砦を作るのだろうか?」サル達は不思議に思う。そしてサルの指導者シーザーは仲間たちを救うことができるだろうか?・・・DVDで鑑賞。   

 

よくできた話だった。シリーズ最高傑作かも知れない。人間たちが完全な悪役かと思いきや、ウイルスによって滅びていくことを自覚し、生き延びるために成すべき行動をしていることも充分に描かれ、ただの殺戮者としていなかった点が成功だったと思う。

 

まるで本物の戦争のシチュエーションに似ている。犠牲者が発生することによって互いの勢力の間には憎悪が深まり、抜き差しならぬ関係になることが多い。でも、相手には相手なりの理屈があり、何かの理想に燃えていたり、建設的な意見を持っていることも多い。ちょっとした意見の相違で、良い方向性は無視され、殺し殺される関係になる、その仕組みがいかにもありそうで、分かりやすかった。主人公シーザーが個人的な恨みをどんな形で晴らすことができるかはラスト近くで明らかになるが、かなり高尚なレベルの迷いがシーザー君に発生していたようだ。 

 

今回の敵役はそういった流れの関係で素晴らしかった。純粋に残酷なだけの殺し屋になっていなかった点が良い。キャラクター設定、話の流れの検討が十分になされていたと思う。くだらないSFに過ぎない話なんだが、実社会の問題点を的確に再現していたし、そして出エジプト記をも表現したかのような展開によって、なんだか感動作になっていた。  

 

技術面も素晴らしかった。サルたちの個性が分かるようなメイク、CGによる感情表現のレベルが高い。簡単なCG作業だけでなく、表現をスムーズに変化させるソフトを開発し、時間と金をかけて作業しているんだろう。 

 

今回は特に動物園出身のサルの個性が素晴らしかった。彼は典型的な勇者の個性ではなかったが、観客の笑いを誘う役割を担当し、重苦しいシーンの中でかすかな笑いの要素をもたらし、いかにも実在しそうなお調子者キャラクターを担当していた。この話の後に、また続編が作られるのだろうか?可能だとは思うが、これ以上の進展があると、かなり荒唐無稽な方向に移らざるを得ない気がする。この作品でいったん終了が良くないかと思う。

 

 

 

2018年4月13日

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ(2016)

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- TWC -

 

マクドナルドがフランチャイズ展開するに至る経緯を、マイケル・キートン主演で描いた作品。DVDで鑑賞。    

 

見ごたえのある作品だった。マイケル・キートンの演技はオーバー過ぎてしまうのが常だが、今回は少し抑制が効いていて、野心を秘めて交渉にあたる人物が上手く表現できていたと思う。迫力たっぷりに怒鳴り散らす強面の演技だったなら、作品が安っぽくなってしまう。冴えない風貌でありながら、粘り強く成功を目指すタフな人物にはコメディアンだったほうが良い。前半で商売が上手くいかない哀れな様子が丹念に描かれていたから、彼が後半になってアクドイことをやっても、なんとなく観客は許してしまうのではなかろうか?描き方が良かった。 

 

しかし、肯定的に描いてよいのかという疑問は多少残る。冷酷なアイディア泥棒、権利の簒奪者、嘘つきの極悪人をヒーローとしてしまうのは米国では一般的でも、世界的にはどうか?あまりに起業優先のアンモラルな考え方ではないか?・・・・そう感じてしまうようでは、生き残れないのかもしれないけどねえ・・・と、思う。   

 

マクドナルドには最近は全く行っていない。子供達も大きくなり、ハンバーガー屋よりもまともな外食を好むようになったからだ。そしてチキンナゲットの悪評も影響している。ナゲットの品質については、マクドナルドのせいというより委託した中国企業のモラルのせいだと思うのだが、食品製造を中国に委託するというのは危険が大きい。世界展開をしている企業は、イメージを大切にするため、管理が及ばない企業には絶対に委託してはならなかった。モラルは元々が欠けていたのだろうが、イメージは大切だ。    

 

規模が大きくなれば、オリジナルの企業家であるマクドナルド兄弟を駆逐できるということに驚く。訴訟国家のアメリカだから、兄弟とクロック氏の間に交わされた契約は相当なものだったはず。制約さえしっかりしていたら、企業乗っ取りのような事態はなかったはず。フランチャイズ契約と、土地をからめた資金確保の手法、それらを最初の時点で読み切れなかった点が、ファウンダーとなるかどうかを分けたのかもしれない。   

 

資本主義は、こんな事業家が評価される傾向を生んでしまうようだ。富に対する偏重がある。まず金をつかむことが重要と考えられ、手段については目をつぶっても良いか?仕方ないか?という感覚になるものらしい。後は法的にどうかの判断になり、法規制をすり抜ければ構いやしないさ・・・・それが社会の基調になる。そんな仕組みが出来上がると、自然と外部にまでその影響が拡がる。その傾向が、まさにグローバリズムってやつかも知れない。 

 

それにしても恐ろしい企業家魂。こんな連中がうごめくなら、アイディアを盗み、権利を奪い、政治家やマスコミを誘導し、嘘を信じ込ませてでも富を得ることが許され、尊敬さえされるだろう。実際、大企業の多くはそんな歴史を経ていると思う。大統領や閣僚たちにも、そんな臭いを感じる。

 

劇場主は、そこまでの覇気がなかった。オリジナルの兄弟のように、自分のやる気で小さな診療所を管理し、ときに患者から感謝をもらえる、そこに最大の意義を感じている。チェーン化とか多角経営化などは、本来の運営目的からは逸脱しているように思う。そこが限界なんだろう。 

 

マクドナルド自体も、少なくとも熊本市では売り上げは頭打ちのようだ。だが工夫をして企業を維持していく姿勢は感じられ、その努力には頭が下がる。それでも今は回転ずしのほうがイメージ的に上に行っている。「健康」「安全」「清潔」「高品質」「低価格」「早い」「間違えない」など、多くの要素を満足させている。ハンバーガー業界は衰退期にあると思う。帝国の逆襲はあるだろうか?

 

 

 

 

2018年4月10日

バッタを倒しにアフリカへ(2018)

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- 前野ウルド浩太郎 -

 

昆虫学者の前野氏の著書。氏がモーリタニアに渡った経緯、バッタの研究、および研究費確保のために苦闘した様子を綴った本。    

 

売り上げも相当あげたようで、高い評価を受けたらしい。単純に面白いし、ポスドクの立場の辛さの記述や、学術的な知見の紹介もあり、盛りだくさんの内容で、読み物としてよく仕上がっていた。書き手の姿勢が素晴らしい。 

 

若者らしい軽いノリで、最果ての地にも近いアフリカ西部に行く勇気、そこで目論見と違った展開によって苦しむことになるので、フィクションのようなストーリーが展開し、小説のようだ。しかも話が単調にならないように、学術的な話題を添えたり、オタク研究と言えそうな珍しい話もあり、読者を飽きさせない。本としてよく仕上がっていた。 

 

バッタの問題の大きさは、劇場主にはよく分からない。昔は日本でもイナゴの被害が出ていたそうだが、今は農薬の力なのか、まったく聞かない。アフリカでも農薬は大量に使われているはずで、昔ほどの被害はないように思っていた。農薬の害のほうが気になる。 

 

研究の進行具合もよく知らない。バッタの遺伝子研究は当然進んでいるだろう。バッタが変性しないようにする研究も、わりと簡単にできそうな気がするのだが、そういえば完成したという話は聞かない。バッタに限った薬が見つかれば、大騒ぎする必要はない。イナゴ注意報が出そうな地域に限定して薬を使う。他の動植物に影響のない薬を選ぶなど、対応策は決まって来る。理屈は単純で、やがては高度な対策が完成するはずだ。そうなったら、前野氏は職を失うかも知れない。でも氏のことだ、ちゃっかり他の昆虫をネタに、きっとまた本屋大賞級の書物を書き上げるだろう。  

 

イナゴが食べない作物を遺伝子操作で作ろうという研究は既にやられていると思う。米国の企業が考えないはずはない。現地では死活問題だから、開発されたら拡がると思う。作物は日本に運ばれても、加工食品に混ぜられたら管理は難しい。法的な対応が必要。でも、TPPなどの交渉によって、独自の規制は難しいかも知れない。

 

 

 

2018年4月 7日

ブレードランナー2049(2017)

Blade_runner_2049

- SonyColumbia -

 

新型レプリカントである主人公。生殖に成功したらしい謎のレプリカントを探る任務が彼に下されるが、思いがけない事態が待っていた・・・DVDで鑑賞。

 

CG技術が素晴らしい新作だった。ヒロインのAI画像の表現が特に素晴らしい。演じていたアナ・デ・アルマス嬢の色っぽさと相まって、魅力的な愛人といった雰囲気に仕上がっていた。

 

前作も斬新な街並みの光景が印象深いが、この作品も広告表現がより立体的になり、表現が進化した様子が見事に描かれていた。技術の進歩が、そのまま画像の進歩につながり、絵もきれいだった。  

前作よりも戦いのシーンが少ない気はした。多くの時間は主人公が静かに捜査するだけで、緊迫感はあるものの、アクション映画のような興奮には至らないと感じる。 

 

おそらく、10分に一回くらい、敵と戦うシーンがあったほうが良かったのではないか? 前作ではいろんな敵が登場し、敵のそれぞれが個性的だったので飽きなかった。この新作では、そこの魅力が欠けている。

 

難題を次々クリアしていくように、難敵をなんとか倒すことは快感につながる。そこが魅力になっていたことを、製作者自身が理解していなかったのかもしれない。最大の魅力を破棄していたと言えるのではないか?

 

もちろん、ラストのほうでは激しい戦いがあり、相当にリアルな殺し合いとして描かれていたが、大事なのは定期的に戦いが繰り返されることではなかったかと劇場主は思う。観客の飽きを避けるためには、定時的に何かあって欲しい。その対策が不足していた。

 

主役を演じたライアン・ゴズリングは、現時点での最高の人気スターになっているが、あまりタフな印象を受けない。流行りの肉体派スターのほうが役柄に合っていたかも知れない。ハリソン・フォードが演じた前作の主人公は、敵のほうが腕力があるから当然なんだが、ひどいやられようだった。女レプリカントから首を絞められてヒーヒーいっていた。やっとこさ武器で敵を倒すには倒したが、ヘロヘロ状態になっていたのが結果的には良かった。今回は主人公もレプリカントなんで、クールに戦うという設定だったのかも知れないが、それで観客が感情移入できるはずがない。

 

したがって製作者は考えを変え、主人公は人間で、彼の恋人が問題の新型レプリカントなのか?と疑うような展開のほうが良かった。主人公は表情豊かに戦い、悩み、苦しむほうが良い。苦しい戦いをしのいで始めて観客からの拍手が得られるものである。その点が検討不足だったように劇場主は感じた。

 

 

 

2018年4月 4日

星空の用心棒(1967)

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- Long Days of Vengeance 

 

実実の無実の罪で服役していた主人公は脱獄に成功し、自分をはめた連中に仕返しをしていく・・・2月25日、衛星放送で鑑賞。   

 

驚いたことに、アメリカ西部からメキシコ付近の物語のはずなのに、登場人物たちは平気でイタリア語を話していた。たぶん米国では英語に翻訳されていたはずだが、口元をみると変だと気づいていたのではなかろうか?都合の良い作り方をするイタリアの映画人たちは、あえて無理して英語で話そうとは考えなかったのか?合理的といえばそのようだった。    

 

言葉もそんな具合だが、全体が明らかにマカロニウエスタンの作り方。主人公が敵の散髪屋に対して、自分の髭を剃れと命じるシーンがある。普通なら敵にナイフを持たせたりするはずがない。マカロニウエスタンでないと難しいシーンだった。リアルさを完全に損なうシーンだと思うが、緊迫感は確かに盛り上がる。そのためにはリアルさは犠牲にするのも、ある意味では合理的であろうか?よく分からないけど。   

 

主人公の脱獄の方法も素晴らしかった。どうやって仲間と連携したのかはさっぱり分からないが、簡単な仕掛けを少しずつ整えてついに大掛かりな方法にたどり着くのが面白かった。敵がたくさん迫って来る中で、わざと目立つ場所に立ち、ライフルで次々と餌食にするシーンも格好良い。でも、普通なら敵からやられるほうが先じゃなかろうか?細かく言っていくと、キリがない。    

 

主演のジュリアーノ・ジェンマは体格が良くて動きも軽く、確かに格好良い。演技力に関してはよく分からないのだが、西部劇の主人公は表情をあまり変えず、タフそうな、クールそうな顔をして動きが良ければだいたい務まる。演技力は、長いキャリアを保つためには必要でも、単発の作品でならあまり必要ない。    

 

この作品の復讐の方法はかなり複雑だった。少し考えすぎていたかもしれないと思う。原案は「モンテ・クリスト伯」らしいが、原案のほうがもっと単純な方法だったように思う。わざわざ法の裁きを要求するのは、やはり映画の盛り上がりのための設定であり、無理があったように思う。

 

 

2018年4月 1日

ゴールド/ 金塊の行方(2016)

Gold

 

  Weinstein,Sony

 

代々鉱山開発を営んできた業者が主人公。会社は危機に瀕し、一発逆転を狙ってインドネシアの金鉱山開発に賭けるが、思わぬ事態に陥る・・・DVDで鑑賞。 

 

主演はマシュー・マコノヒー。彼の映画で外れがあったろうか? 期待して鑑賞した。今回は凄い老けメイク、肥満体メイク(だろうと思うが、本当に太ったのかも・・・)をして登場して怪人物を演じていた。迫力は充分あり、アカデミー賞に相当しそうな主演ぶりだ。実際には特に何かの賞を受賞したようには書かれていないから、たぶん企画がマイナーだった点で話題に上りにくかったことが影響したのかもしれない。主演男優賞を取ってもおかしくはないと思う。   

 

ストーリーは実話を基にしているそうだ。その関係でか知らないが、あらすじは早い段階で読めてしまった。ただし、逆転に次ぐ逆転が上手く展開したので、物語はとても面白かった。主人公のキャラクターも良かったし、全体的な完成度は高いと感じた。惜しむらくは、好敵手がいなかった。主人公たちにことごとく対抗し、汚い手を使う嫌われ役が欲しい。金融界の人物たちが何人か、それに相当していそうだったが、もっと嫌われるいやらしい性格描写が欲しい。   

 

基になった実話のほうは知らなかった。いつ頃の話だろうか?リーマンブラザースも被害を受けたというが、日本ではちょっと報道されただけではなかったろうか?新聞に小さく載った、薄っすらとした記憶しかない。破綻の主要な理由ではなかった。   

 

リーマンブラザースという会社の名前を知った頃は、既に住宅ローン業界がヤバイと言われてしばらく経った後であり、潰れるか潰されるかしかない状態だったから、詐欺事件は大きなウェイトを占める問題ではなく、そのせいで記憶から抜けてしまったのかもしれない。 

 

思い込みを利用した詐欺事件は、古くから今まで数知れず。そこいらに現在進行形で存在しているようだ。FXにとりつかれて破産した病院もあるという。仮にある程度儲かっていても、常に利益を維持するのは難しい。翌年の税金が急激に増えて、支払い能力を維持できなかったりするらしい。金の計算は複雑だ。 

 

ビットコインなど、価格変動が激しい商品があると、欲が集まった相乗効果で、値の変動が激しくなる。そこを利用しようと、有象無象が集まってさらに事態を過激にしてしまうのだろう。信用できそうな人物が勧めてくると、つい話に乗っかってしまうものだろう。確かな証拠が出た時点では参入できない、早い者勝ち、そんな商品は、大損を覚悟しないと手を出せないということだろう。

エイプリルフールだけなら騙されてもいいが、大金が絡むと恐ろしい事態に陥る。  

 

 

 

 

 

 

 

2018年3月29日

ドリーム(2016)

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- 20C.Fox -

 

宇宙ロケット開発に携わった黒人女性たちの活躍を描いた作品。DVDで鑑賞。

 

勧善懲悪、努力と成功を描いていて、健全な精神にのっとった伝統的な作り方をしている。時々コミカルなシーンがあり、家族愛に満ちた話もあり、本当に伝統的。そこが鼻につく面はある。

 

ビデオ屋さんで見るまで、こんな作品が作られていたことを知らなかった。日本ではあまり話題になりにくい作品テーマだから、雑誌などであまり取り上げられなかった関係かも知れない。弱者の誰かが肉体的な虐待を受けて怪我でもしないと、日本人の注目は集まらない。冷遇、無視、静かな差別は、実際に体験した人間でないと分かりにくいものだろう。 

 

三人の女性技術者たちが中心になっていたが、特に計算能力の高い女性が主人公に相当していたようだ。彼女が能力を示すシーンは格好良い。数学に関しては、劇場主はとうとう意味を理解できないまま終わってしまったが、ロケットを飛ばす場合を考えると、受験で苦しんだ計算式にどのような意味があったのか推測ができる。だから、この作品は数学に興味を持てない学生が観ると、意味があるかもしれない。

 

新しい技術の裏には綿密な計算の基礎が必要であり、いきなり斬新な技術が開発されることは滅多にないものだと、この作品は教えてくれる。 高校の授業でも、意義を説明してくれたら、意欲が全く違っていただろうと劇場主は思う。ただ問題を解くだけの味気ない授業では、よほどな欲がないと続くものではない。この授業が将来どのような意味を持つのか、どのように学問が進んできたのか、そこが知りたかった。 

 

まあ、自分で調べるべきだったのだろうが、当時の図書館では本の在庫も限られていて調べるのは難しかった。今ならネットで数学の歴史が分かる。当時なら自分で数学の講師たちに聞いてみるくらいの心がけがないと、高校を非難はできない。 

 

医学部の心電図の授業も酷かった。ただ所見を羅列するばかりで、この不整脈は治療が必要なのかどうか、臨床的な意義といった面には話が及ばない。教科書にも曖昧な記述しかない。それでは理解の度合いも知れて来る。記憶するのは無理だ。まあこれも、時間をかけて調べれば少しは理解することもできたのだろう。不整脈の意義は、今でも現在進行形で理解が変化しているから、治療の必要性を論じることは簡単ではなく、とりあえず形を教えるくらいがせいぜいだったのかもしれない。

 

この作品は美しい話だが、少々出来過ぎている。演出過剰な面がかなりありそうだ。映画だから許されるとは思うものの、わざとらしさを嫌う人間もいると思う。IBMの高価なコンピューターを勝手にいじって良いとは思えないし、直ぐに理解して動かすのは、いくらなんでも無理じゃなかろうか?マニュアルを精読し、技術者に指導を受けた後、独自に努力して精通していったというのが真相ではないかと思う。     

 

 

2018年3月26日

トラクターの世界史(2017)

- 中公新書・藤原辰史著 ー

 

トラクターの開発、製造者間の競争、性能の進化、国家や地域に与えた影響を論じた学術的な本。

なんとマイナーな企画であろうか。あまりに専門的過ぎる。普通の人間はトラクターの歴史などに興味を抱くことはない。農家でさえ、おそらくは性能の良い耕運機には注意が向くと思うが、歴史まではそう考えるものではないだろう。農学者か、機械屋、リース業者だけが注目する分野の本。それが新書になって、しかも結構売れているということに驚く。

 

劇場主がこんな本を買ってしまったのは、あまりのオタクめいた内容に驚いたからなのだが、最近は「応仁の乱」などのように意表をつくほどのマイナー企画が、結構な評判になることもある。新書の場合は専門的な内容であることが、かえって魅力になることもあるようだ。見識を広めたいという、購読者たちの欲求のせいかも知れない。

 

とにかく、トラクターには意外なほどの影響力があったと知った。米国の砂漠化は、劇場主は移民たちが腕力で森林を破壊していったせいと思っていた。数世代にわたって無計画にただ木をなぎ倒し、広大な農園を作っていったから土壌の再生能力を奪ったのだろうと。綿花畑が作られた時代には、トラクターはなかったはずだ。だからトラクターだけの力で気候変動が起こったはずはない。そのスピードを速めたことは間違いないと思うが、それだけが土をおかしくしたわけじゃないと思う。

 

農産物の生産効率を上げたい場合、トラクターの導入は基本になる。やはり耕す作業はもっとも労力を要する。重たい土を持ち上げ、砕く、そのために人類の多くが体を酷使してきたはずで、それを機械に代替わりすることは夢であったろう。  

 

劇場主の育った農村は、大きなトラクターを見かけることはあまりなかった。狭い畑ばかりだったから、耕運機でも充分にはかどるくらいの畑がほとんどだった。耕運機は土地を固めるような害は感じにくい。耕運機が耕した後は、人間が作業したよりも土が攪拌され、いかにも農産物が成長しやすかろうな細かい土くれができていたはずだ。でも、大型の機械の場合は分からない。   

 

機械は安くなく、かなりの農家が機械のローンに苦しんでいたと聞く。ネットで見ると、20~30万で買えるようだが、故障の管理にも金が必要だろう。トラクターばかりじゃなく、シイタケやお茶の乾燥につかう施設はかなり金を要する。農協から手配してもらうのだろうが、農産物の価格は下落傾向だから、返済計画をうまく作れる人は少数派だったろうと思う。トラクターに代表される機械化が、農村を破壊してしまいつつある、そんな印象も持つ。農業をやっていなくて良かったと、正直思う。 

 

トラクターは今後、どのように進化するのだろうか?車が電動になる傾向だが、耕運機もそうなるのだろうか?菜園用の小さな機械は、もう電動が中心のようだ。電力が今より安くなり、自然エネルギーで充電し、パワー面の不安がなくなり、費用的にエンジンを上まわる効率が出たら、画期的な転換が起こるはずだ。自動運転に関しては、車より開発しやすいかも知れない。技術革新によって、耕運機に勝手に作業してもらい、運転手は家でテレビでも見ていられる時代が来るかも知れない。

機械オタクかプログラマーが優秀な農家と言われるようになる?

 

 

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